2015年1月20日火曜日

突き抜けるサービスという考え方

ITというよりも、サービスに対する私的感覚。
何かサービスを考えるときは、常にリコーの田村氏の講演内容を思い浮かべるようにしている。
http://www.icpe.or.jp/icpe/icpe_1/3400/
今回の内容は殆ど上記に記載されています。なにせ、私のバイブルのような講演なので。

新しいサービスを生み出すときに指標にするのが、ナンバーワン企業の法則。
オペレーショナルエクセレンスとプロダクトイノベーション、カスタマーインテマシーからなる。
優秀な企業になるためには、どれか1つを選択する必要があるという考え方。

殆どの会社はカスタマーインテマシーを選択している。
突き抜けている会社はオペレーショナルエクセレンスやプロダクトイノベーションを選択する事が多い。

例えばユニクロ。
オペレーショナルエクセレンスを実現して、フリースやジーンズで価格破壊を起こした。
当時は所謂”ユニバレ”という言葉が生まれ、ユニクロを着ていることがバレるのは、
恥じというような状態だった。しかし、ユーザは買った。買い続けた。

そうなると、あれ?これってありなの?という事で他のメーカーも、
激安衣料品に参入してきた。続々と参入してきた。
そして、この分野では一気に競争過多になる。

突き抜ける会社が出るとレッドオーシャンになる。
これはブルーオーシャン戦略から見ても明らか。

ユニクロはここで負けなかった。とても強かった。
シンプルを着こなすという売り出し方に成功。
広告もシンプルな着こなしを意外な人がやっているというところでとても注目された。
ユニT等に代表されるように、"時代の先取り"という企業になった。
新商品開発ではインナーに目をつけ、ヒートテックを開発した。
これは各社がまた真似をした。しかし他社は所詮2番煎じ。
要するに猿真似であり、ユニクロの影はもはや拭えない。
オペレーショナルエクセレンスではなく、プロダクトイノベーションへスイッチに成功。

ここで考えると、やはり最強はプロダクトイノベーションという話になる。
要するにブランド化なのである。

カスタマーインテマシーを追求する企業をよく見かける。
しかし、これは果たして本当に追求出来ているのか。

実は日本人はすでにサービス精神というのが備わっている。
お客様は神さまです。という感覚は江戸時代から続いている。
顧客第一主義は吉宗の時代から流れている日本人の心。
石田梅岩が提唱した内容は"おもてなし"という大事な文化となっている。

ゲルマン民族はホストがゲストを迎え入れるという"ホスピタリティ"を持っている。
よく、同じ考え方をする人が居るが、ホスピタリティとサービスでは性質が違う。
サービスというのは語源はサーバントであり、召使・奴隷なのである。
これは、お客様は神様ですという考え方。お客様自身も自分が主人だと思ってしまう。
従って不条理な値下げ要求をやったり、怒鳴り散らしたりという自体が発生する。
市役所や家電量販店でよくみるのは、サービスとして考えている人が多いから。
結果的に顧客の立場が上になってしまうのである。

ホスピタリティの語源はホストであり、主人が旅人を歓迎するところから来ている。
ホスピス等の言葉についても同様であり、迎え入れるという意味合いがある。
この場合は顧客は対等、むしろホスト側の方が強い。
ディズニーランドで考えると解り易い。
実はディズニーランドというのはホストが圧倒的に強い。
強制的に退場させる権限を持っている。夢と魔法の王国に合わない人は徹底排除。
園内で弁当を食べたり、コンビニのおにぎりを頬張っていたら大変だ。
直ぐにランチエリアにつれていかれてしまうだろう。
しかし、対等な立場で楽しむ人に対しては最高のパフォーマンスをもって迎え入れる。
これはとても簡単な話で、自分の家に入ってきてくれるお客さんに対して、
ルールは守れよ、と。そうしないと他の客も楽しめなくなるだろ、と。
完全にホストの方が強い。これがホスピタリティ。

ホスピタリティとサービスについては別の機会に触れるとして、
とにかくサービスとホスピタリティは違うと認識して欲しい。
そのうえで、"おもてなし"を考えた場合、何なのか。
日本人は農耕民族であり、おもてなしの意味合いはホスピタリティの文化とは少し違う。
おもてなしは基本的にお客様を満足させようという気持ちは、ホスピタリティと変わらない。
迎え入れるという主人の立場、対等に振舞うというのも変わらないが、
ルールを守れない人に対しても、奉仕の気持ちで接する。
そして、しっかりと教育を行うのもおもてなしの特徴なのである。
ある程度、この部分に日本人は美意識を感じている。そこから外れる物はノイズでしかない。
なので、おもてなしをしてもらえると考えるところでは、それ相応の対応をする。
郷に入っては郷に従え。なのである。

おもてなしをしてもらえないと感じるところではしない。
お客様は神様です。そういう扱いをしてもらえるところでもしない。
なぜなら、そこはサービス、召使いを扱き使う考え方なのだから。
この考えが通る会社で果たしてカスタマーインテマシーが実現出来るか。
カスタマーインテマシーでは顧客とプロセスを共有する事が重要になる。
顧客と全てのプロセスを共有するには上下関係を作ってしまうところは難しい。
ディズニーランドの例では、顧客はプロセスを共有し楽しむことを目的としている。
その為に必要な事は例えゲストであっても強制排除対象とするのである。
この決断を出来る企業はなかなか存在しない。突き抜けるのは難しい。

役所では税金を納めてやってるんだ!という強い気持ち。
また、働いてる人間は公僕なんだ!というような上から目線がある。
そして、役所の人間もそれを受け入れてしまう。もしくはそんな事は無いと態度に出してしまう。
それが一層に不愉快さを増してしまい、客の神様目線を増長させてしまう。
そういうサービスを提供してしまう場合が多い。
ここでおもてなしを実施すると、また別の結果が生まれるか?
答えは、yes。ただし、これにはとても長い時間が掛かる。
なぜなら来る人間を"教育"しなければならないからだ。
この役所は普通とはちょっと違うぞ? そう思わせなければならない。
そこから、職員もちょっと違うぞ?あれ?これは、郷に入っては郷に従わなければ。
そして、自身の神様目線はノイズになっていく。
突き抜けるサービスは常に対等の立場でお客様と接している。

今、注目しているクラウドで新IDCFクラウドがある。
500円の1コインクラウドをリリースした。
なんちゃってクラウドではない。ちゃんとしたAPIもかねそろえたサービスだ。
AWSのmicro相当のサービスが500円で1ヶ月使えてしまう。
これは前述のユニクロの時と同じイメージを持てる。
そして間髪いれずに新しいサービスがリリースされていく。
取り組みも「尖っていく」というマインドの元で動いているのでブレにくい。
ここでいうブレというのは、みんなでみかんを取りにいこうと言っているのに、
きゅうりを取ってくるようなことを言う。
りんご位だったら同じ果物で許せるが、さすがに野菜は違うだろ。というイメージ。
確実に伸びる筈(大きな事故が無ければだが)なので、新サービスに期待している。
まだまだこれからなものの、国産クラウドで最も注目されるクラウドになる筈。

このように突き抜けるサービスは努力しなければならない。
500円にするのにもなみなみならぬ努力があったことを想像できる。
他社より2割安い、ないし3割安い。これはオペレーショナルエクセレンスではない。
単なる安売りであり、しっかりと考え抜いた結果ではなく、
とりあえず時代に合わせて安くしたというケースが多い。
この場合の多くは無理な価格設定をしたことにより破綻する。
もしくは、しっかりと考えた企業に圧倒的大差で抜かれていく。

1人で突き抜けるサービスを提供するのは難しくない。
ただこれは自己満足の域を脱しない。
会社として提供する場合はメンバーの協力が必要になる。
メンバーを信じて任せる。これはとても重要な要素と考えている。
現場力の無い会社では、この委譲が上手くできてないことが多い。
その為、ローンチまでに時間が掛かる。その間に時代に追い越されてしまう。
スピードは突き抜けるサービスには絶対に必要な要素。


さて、突き抜けるサービスについてまとめてみた。
まだまだver1な訳だが残念ながら私自身が突き抜けるサービスをローンチしたことが無い。
自戒も含めて書いたことをしっかりと考えながら、
突き抜けるサービスを提供出来るチームを育てていきたいと思う。

2015年1月17日土曜日

2015年に思う事

あけましておめでとうございます。
今年も宜しくお願い致します。

2014年は運用自動化元年というお話を書きました。
遠からず、その動きは各所で見られた1年でしたが、
未だマインドという部分で停滞しているところが多いように感じました。
今年は思想から行動に移って本格的な運用オペレータの淘汰が始まると思います。

それでは今年はどんな年になるでしょうか。

2015年はコンテナ運用元年になると考えています。
コンテナというと、私はOpenVZやVirtuozzoのイメージが強く、
VPSのような感じであまり良いイメージがありません。
また、ハイパーバイザー型のようにサーバをまるっと仮想化した方が、
私のようなインフラエンジニアはやり易いように思えて、どうしてもコンテナ型は敬遠します。

コンテナ型はカーネル共有型になる為、どうしても向き不向きが出ます。
PostgreSQLやOracleのようなデータベースには向いていません。
またTCP周りのチューニングも難しくなり、アクセス数が膨大なサイトは最適化が難しくなります。
これは私が2014年まで普通に考えていたことです。
多くのインフラエンジニアはそう考えていたと思います。

クラウドが当たり前の時代となりました。
2012年のAWSサミットはホテル日航東京で2部屋で行っていました。
コイニーさんとかがStartupコンテストで登壇していたのを鮮明に覚えています。
丁度、ビッグデータというバズワードが出始めた頃です。
その頃のセッションではビッグデータをいかにストアするかという内容でした。
redshiftも出始めでどう使うのか。DWHを再考するようなイメージだったと思います。

去年は奇しくもマイクロソフトと同じ高輪プリンス。
ビッグデータのキーワードは勿論流行りのキーワードですが、大きく内容が違っていました。
いかにストアするかから、いかに分析するかという内容に変わってました。
リアルタイムに分析して提供するか。adtechが牽引している技術です。
それに伴ってAWSからはKinesisがリリースされました。

この間、たった2年です。
たった2年でビッグデータのストアをいかにするかという話をしていたのが、
リアルタイムでストリーミング解析をする為にどうすればいいかという次元になりました。

話を戻しましょう。
クラウドの「捨てる」というインフラ運用方針もやっと頭の固い人達がついてきました。
ミドルウェアを捨てるという考え方でいくと、ハイパーバイザー型よりかは、
コンテナ型の方がやり易いという話になります。
カーネルに依存するようなミドルはRDS等でPaaSとして利用します。
こうなるとハイパーバイザーでなければならない理由もなくなってきます。

ハイパーバイザーかどうかは使用者側はパブリッククラウド上ではあまり関係ないため、
コストが安くなり、更にlaunchの時間が短くなる。更に柔軟な設計が可能になり、
複数のサーバをスタックして考えるようになる。
要するにCoreOSに代表されるコンテナ管理を前提とした考え方が浸透する。
そんな1年になるんじゃないかなと思っています。

CoreOSはDockerから卒業を果たし、Rocketを打って出ました。
AWSもコンテナ型のサポートサービスを発表しました。
今年は加速するのに十分な要素が揃ってます。
コンテナのミドルウェア分散設計の方法をしっかりと抑えたいと考えています。

今年もよろしくお願いします。